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夢を見る島 / No.31 Youko Sakurai
¥2,000
冒頭のこの文章がなければ、表紙から受ける印象は全く違っていた。 「船で遭難し流れ着いた島からはなぜか出られず、 その謎を解きながら冒険していく昔遊んだゲームのタイトル。 旅行に来た人を迎えたり見送ったり、 そのゲームの島に住む住民と簡単には出られないこの島に住む自分の生活を重ねた。」 この文章がもし最初に差し込まれていなければ、どこかの南の島で過ごしたひと夏の思い出や、作者の日常が気負いなく綴られた一冊だ。けれども、この一文の効果は絶大だ。この島からは出られない住民たちと自分たちの生活を重ねる。青い海と空。鮮やかな南国の花々、果物。さんさんと降り注ぐ太陽の光。それら島の記憶と隣り合わせとなる、散らばるおもちゃ、片付かない洗濯物。日々の生活からは簡単には出られないという心理的圧迫感という名のスパイスで、別々の場所で過ごす時間がうまく混ぜ合わせて料理されている。 最後のページにはさまれたしおりにはこう綴られている。 ------------------------------- そこが現実である事を忘れさせるような場所 美しい海に雄大な自然、夢のような場所にも住人がいて生活をしている。見慣れない景色は新鮮に見えるが、どこに住んでいても楽しみはあるし悩みは尽きないし良い事も悪い事も起きる。それはあなたのいる場所とはさほど変わりはない。側から見れば羨ましい場所、あなたのいるそこも誰かにとって羨ましい場所かもしれない。よそから見える日々は素敵で羨ましい。 A5サイズ 22ページ 2,000円
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隣のメロンは甘い / No.31 Youko Sakurai
¥1,000
斜め上を行ったタイトルと、表紙のメロンを真っ二つに割ったデザインにまずやられる。とてもセンスがある人なのだろう。これはまさしく、zineらしいzineだと思う。 ------------------------------- 透明で綺麗な海の写真をSNSで見た友達に「勝ち組だね」と言われた。彼女の言う勝ち組の台所では週に1回しか来ない宅急便で届けられたメロンが2日で腐り、生臭い異臭を放った。 いつだって隣の芝は青い。 ------------------------------- この冒頭に添えられているステートメント、というかコメント、というか。これもよい。読んだあとにどういう感情が浮かんだのか、どう処理すればよいかわからない、何とも言えない感じがよい。 zineのページをめくると、おそらくフィルムカメラで撮られた夏の思い出なのだろうが、昔懐かしいデジタルの日付が入っているのと、時折差し込まれるシュールなシーンが合わさり、よりこの1冊の魅力が際立っている。 A5サイズ 22ページ 1,000円